マオイズム化するMAGA――トランプ対ハーバード大学の「階級闘争」
2025年6月13日

企業価値10億ドル以上の米企業のうち約25%は「元留学生」が創業している[米政府がハーバード大学との財務契約を打ち切る意向を示したことを受け、抗議行動を行う学生たち=2025年5月27日、アメリカ・マサチューセッツ州ボストン](C)AFP=時事
深まる対立
トランプ政権と東部の名門ハーバード大学の対立は、2つの異なる「アメリカ」の未来像の対立という様相を呈している。
4月中旬、政権は同大学に対し、「アメリカ的な価値観に反する思想を持つ学生の排除」や「外部機関による学内の思想監査」など一連の要求を突きつけた1。ハーバード大学は、「大学の独立や、憲法上の権利を放棄することはできない」と、この要求を拒絶2。それを受けて政権は即座に22億ドル(約3150億円)相当の補助金や契約の凍結の措置をとった。
さらに政権は5月22日、同大学に対し、「ユダヤ人学生に対して敵対的で危険なキャンパス環境を放置した」ことや、「『多様性、公平性、包括性(DEI)』と称する人種差別的方針を採用した」ことなどを挙げて、外国人留学生の新規入学を停止する旨を通告し、在学中の留学生も転校しなければ滞在許可を失うとした3。アメリカの大学が留学生を受け入れるには、国土安全保障省の「学生・交流訪問者プログラム(SEVP)」の認可を受ける必要があり、この許可なしには、留学に必要な公的書類を発行できない。現在ハーバード大学の留学生数は学生全体の約27%にあたる6800人で、年間約6万ドル(約860万円)の学費は大学の重要な財源でもある。世界140カ国以上から集まる留学生は、多様なキャンパスの実現にも欠かせない。
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