イスラエル・イラン戦争の初期の10日間:評価と見通し
筆者が複数の国際会議・会合に参加するために、複数の国を移動し、各地の会議室で缶詰になっている最中に、6月13日のイスラエルによるイラン攻撃によりイスラエル・イラン戦争が開始された。米国は21日にイランのフォルドゥ、ナタンズ、イスファハンの3カ所に空爆を行った。イランの核施設に与えた影響はまだ判然としないが、米国は依然として、限定的に武力を行使しながら、なおも対イラン交渉の可能性を探っているものと見ていい。
以下は中東の各国の専門家との議論を踏まえて取りまとめた、「イスラエル・イラン戦争」の最初の10日間の段階での分析評価と、将来見通しである。
(1)事態の規模の大きさの総合的評価、(2)イスラエルのイラン攻撃における「標的は何か」、(3)それが「なぜ今行われたのか」というタイミングの検討、(4)現段階で想定される「今後の展開」と、(5)当面のタイムラインについて、急ぎ、記しておく。
1.事態の規模と影響の大きさ
イスラエルのイラン攻撃は、「イスラエル・イラン戦争」の開戦と言い表すべき規模と意義深さを持つものであり、1991年の湾岸戦争以来の大規模な地政学的変動を引き起こしかねない意義を持つ。事態の深刻さから、中東の各国や各種勢力は、それが米国陣営であれ、イラン陣営であれ、巻き込まれることを避け、距離を置いている。事態はイスラエル・イランの2国家間戦争、あるいはそこに米国(さらには英国・欧州)が加勢した3カ国戦争(あるいはイスラエルと米欧の対イラン戦争)に限定される見通しであるものの、この戦争の結果は、直接に戦争に参加しない国々にも深甚に及びうるため、短期的なリスク回避のためだけでなく、戦後秩序における自国の有利な位置どりを巡って、思惑が錯綜している。
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