
ダマスカス近郊に展開した治安機関員。イスラエルの支援を受けたドルーズ派と新政権の衝突も起きている[2025年4月30日](C)AFP=時事
領土の分割:米国、トルコ、イスラエルの動きが播く火種
もう一つの大きな負の遺産は、やはりシリアの領土の一体性が外国勢力によって蹂躙されているという、これまでと変わらぬ事実である。アサド政権崩壊は、イランとロシアのプレゼンスを縮小させた一方で、トルコとイスラエルのプレゼンスを拡大させ、両者の間で緊張を生みつつある。この問題は、厄介なことに北東部のクルド勢力や南部のドルーズ派に代表されるように、ダマスカスの新政権とは距離をとるシリア各地の自律的な動きと呼応しあっている。
最も顕著な例は、米軍のシリア北東部へのプレゼンスを奇貨として、YPG/PYD(人民防衛隊/クルド民主統一党)によってシリア北東部の領土が占有されてきたことにある。これまで対ISIS政策やアサド政権に対抗するために、シリア北東部にコアリションの軍事拠点を設置してきた米国は、YPG/PYD をPKK(クルド労働者党)と同じテロリストとみなすトルコ側の強い反対にもかかわらず、これらクルド勢力を事実上の代理勢力として活用してきた。このため米側は、これらのクルド勢力を、アラブ民族なども参加させる形でSDF(シリア民主軍)とあえて命名し、PKKとは一線を画すという「虚構」をとってきた。
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