景気低迷が続く欧州で、就労移民の流入を制限する「人の保護主義」が強まっている。自国の労働市場から移民を減らし、自国民に職を回す狙いだ。 今年の欧州連合(EU)以外からの労働移民の割当数を昨年比五五%減の三千八百人に減らしたのはポルトガル。同国首相府は「国内の労働需給の改善が狙い」と、枠削減が自国民向けの雇用対策であることを認める。 域内の自由な労働力の移動を謳うEUの内部にも保護主義の波は広がる。ドイツとオーストリアは五月に予定していたポーランド、ハンガリーなど二〇〇四年以降のEU新規加盟国からの労働者流入の自由化を「経済上の理由」から一一年に延期した。来月に総選挙があるドイツでは、自国民優先の経済政策で人気取りを狙う素地が広がっている。 英国は外国人労働者の就労条件を厳しくした。科学や法律分野での専門職に就くのに必要な学位は学士から修士に、収入は最低一万七千ポンドから同二万ポンドにそれぞれ引き上げた。英国では語学力や学歴、職業経験などを点数化して就労可能な職業を決める制度をとるが、積算条件は厳しくなっている。イタリアなども同様に受け入れ条件を厳格化した。 失業率が二〇%に迫るスペインでは、政府の費用負担で移民の帰国を促す制度を始めた。帰国した後も、数年たって景気が回復すれば優先的に労働許可証を出すという異例の特典まで付けたが、制度に応じる移民は政府の想定を大きく下回る。

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