6月11日に実行した北朝鮮向け宣伝放送の停止も李氏のスタイルにふさわしい[日韓国交正常化60周年の記念行事に大統領が寄せたビデオメッセージ=2025年6月17日、韓国・ソウル](C)EPA=時事

 韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領が6月4日に就任した。就任式では「堅固な韓米同盟を土台に韓米日協力を固め、周辺国との関係も国益と実用の観点からアプローチする」と強調した。そしてドナルド・トランプ米大統領と6日、石破茂首相とは9日、習近平・中国国家主席とは10日に電話で協議した。韓国大統領の就任直後の電話協議や外遊では順番が重視されており、日本を中国より先にした意味は大きい。李氏と同じ進歩派政党「共に民主党」所属だった文在寅(ムン・ジェイン)元大統領が2017年に就任した際には米国との電話協議の翌日に、日中両国を並べていた。

 就任当日の記者会見で徴用工問題への対応について問われた李氏は、尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権の打ち出した解決策の踏襲を示唆した。「国家間の関係では政策の一貫性が特に重要だ。国家間の信頼という問題があるので、その点を考慮しないわけにはいかない。個人的な信念を国家の政策に押し付けるのも簡単ではない。それが現実だ」と述べたのである。これも、安倍晋三首相(当時)との最初の電話協議で「韓国人の大多数が情緒的に慰安婦合意を受け入れられずにいる」と切り出した文氏とは好対照をなした。文氏は理念先行、李氏は実用主義と言われるが、まさにそれを反映した形だろう。

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