「危機の三十年」を超えて――混乱と対立の時代における戦略的思考
2025年6月30日

民主主義、新自由主義、グローバリズムの衰退が世界に様々な軋轢を生んでいる[トランプ米大統領に反対する「No Kings Day」デモの参加者たち=2025年6月14日、アメリカ・ロサンゼルス](C)AFP=時事
2025年1月20日の第二次トランプ政権の成立は、国際社会に大きな衝撃を与えることになった。ドナルド・トランプ大統領の「アメリカ・ファースト」のイデオロギー、そしてその政策は、それまでのアメリカの対外政策とは大きく異なる様相を示している。同時に、それ以前の政権から持続する長期的な潮流も存在する。たとえば、2009年1月のバラク・オバマ政権の成立以後、民主党と共和党を問わずいずれの政権においても、アメリカの対外軍事関与を縮小する動きが見られる。2013年9月に、オバマ大統領は、「アメリカはもはや世界の警察官ではない」と語り、従来のような対外関与が自明ではないことを宣言した。いわばアメリカの世界への軍事関与の縮小の意向表明は、第二次トランプ政権の新しい動向というよりも、長期的なアメリカ政治に見られる趨勢と言うべきであろう。
このようにして、トランプ大統領による衝動的な言動に振り回されることなく、その背後に見られる巨大な国際政治の構造的な変化にも目を向ける必要がある。すなわち、現在見られる変化を、より大きな時間軸の中に位置づけることで、われわれが直面する危機の性質をより的確に理解できるのではないか。
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