見ごろ食べごろ飲みごろ

執筆者:阿川佐和子2025年7月8日
ピータンの黄身がドロリンかどうか、開けてみないとわからない(写真はイメージです)

 開けてみないとわからない食べ物がある。

 その最たる例はピータンだ。ピータンは、外の様子を見ただけでは、黄身がドロリンとしているか、カチカチかわからない。もちろんドロリンが理想的なのだけれど、どんなに外側をさすったり見つめたりしたところで、中の状態を察することはできない。

 最初に籾殻とか泥とかが混じったような外壁を洗い流したのち、固ゆで玉子を剝く要領で殻を取り除く。すると、プルンプルンにかたまった白身(というより黒身)が現れる。ピカピカ輝いている。きれいだ。でもまだわからない。黄身(というより黒灰色身)がドロリンと柔らかい状態であることを祈りつつ、包丁で縦半分にカットする。と、その瞬間、

「ああ……」

 落胆の声を発するか、

「お、お?」

 ニンマリするか、ここが運命の分かれ目である。

 たいていの場合、ピータンは二個とか四個とかがワンパッケージになって売られている。一つ剝いて黄身がカチカチだったとき、残るピータンもカチカチだろうか。暗い未来が予想される。でも反対に一個がドロリンであった場合、残る玉子もだいたいドロリンであることが多い。なぜか。わからない。作る人の腕次第なのかもしれない。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。