統治の安定性という観点では、イランと戦前のアフガニスタン、イラクの状況には大きな隔たりがある[愛国歌「ああ、イラン(Ey Iran)」を歌えと呼びかけるハーメネイー最高指導者の写真の前を歩く人々=2025年7月9日、イラン・テヘラン](C)EPA=時事

「ならず者国家」、あるいは「悪の枢軸」と米国から呼ばれてきたイランであるが、同じラベリングを受けてきた北朝鮮と大きく異なる点が一つある。イランは、紀元前6世紀のアケメネス朝の時代より地域の覇権国として興隆を繰り返してきたペルシア帝国の流れを汲む歴史的な地域大国であり、それは2025年の現代も変わらないということだ。

 イランの人口は中東地域でエジプトに次ぐ8750万人を数えており、これはイラク、サウジアラビア、シリアの国民人口を合わせた数に匹敵する。1979年のイラン・イスラーム革命以来米国から40年以上に亘る経済制裁を受けながら、2024年の名目GDP(国内総生産)は4014億ドルと、トルコ、サウジアラビア、イスラエル、UAEに続く中東第5位に位置している。石油・天然ガス資源が豊富なことに加え、長年の経済制裁により自前の技術に依拠する工業も発展しており、年間100万台以上の自動車を生産する自動車産業はトルコに並ぶ規模となっている。全世界におよそ2億人いると推計されるイスラーム教シーア派の教義に基づいた政治体制が採られており、各国のシーア派コミュニティを影響圏とするイデオロギー的な中心地でもある。

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