クック理事(右)の解任理由とされた住宅ローン不正問題は、トランプ政権と民主党の双方が政治的“武器化”を進めているようにも見える[2025年6月25日、アメリカ・ワシントンDC](C)AFP=時事
パウエルFRB議長は、“賢いフクロウ”だったのか
「人は常々、“賢いフクロウでありたい”と願うものだが、彼こそ当てはまる」――ダラス連銀総裁を2015年に辞したリチャード・フィッシャー氏が指した「彼」とは、ジェローム・パウエル氏のことだ。2017年10月、ドナルド・トランプ大統領がパウエル氏を次期FRB議長に指名する流れで、当時FRB理事だったパウエル氏をタカ派でもハト派でもないとの認識を示す際に、使った表現である。
確かに、パウエル氏はタカ派ともハト派とも判断しづらく、中立派と位置づけられよう。FRB理事時代の2013年5月のFOMC(連邦公開市場委員会)では量的緩和の縮小(テーパリング)開始を支持した。議長就任後は、2019年7月から3回にわたる予防的利下げを決定。コロナ禍に直面した2020年3月には、ゼロ金利と無制限の量的緩和を迅速に再開させ、窮地の米国経済を救うべく、大胆な緩和策を講じた。2022年3月からはインフレ・ファイターの一面を覗かせ、4回連続で0.75%を挟む利上げサイクルを指揮。2023年7月までの約1年4カ月の間に、5.25ポイントもの大幅利上げに踏み切った【チャート1】が、景気後退入りを招くことなく、2024年9月からは利下げに転じ、今に至る。
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