第4部 ヴィクトリヤの軌跡(2) 占領地の闇
2025年9月23日
生前のヴィクトリヤ・ロシナ[2021年10月12日、ウクライナ・キーウ](C)REUTERS/Stanislav Yurchenko
ロシア軍のウクライナ全面侵攻から1カ月も経たない2022年3月11日、ウクライナのオンラインTV『フロマドスケ』のホームページに「光の街、占領下エネルホダルからの報告」と題するヴィクトリヤ・ロシナ(1996-2024)の記事が掲載された1。エネルホダルは、ウクライナ南部に位置するザポリージャ原発の職員たちが暮らす人口約4万5000人の街で、クリミア半島から進撃したロシア軍部隊によって、包囲戦の末に占領されていた。記事は、占領下のこの街にいち早く入り、実情を伝えるものだった。
ロシア軍が原発を占領してしばらく、エネルホダルを含む原発周辺は完全封鎖されていたが、3月9日になって、街からウクライナ側に避難民を脱出させるための「人道回廊」が設けられた。多数の車が占領地からウクライナ側に逃れようとする中で、ヴィクトリヤは1人、この回廊を逆行したのである。
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