インドネシアの過激デモで警察の威信失墜、国軍は「焼け太り」か

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執筆者:赤井俊文2025年9月24日
抗議活動における一部の行動は反逆罪やテロリズムに相当すると述べた[政党指導者らとの共同記者会見で全国的な抗議活動について発言するプラボウォ大統領(中央)=2025年8月31日、ジャカルタ・大統領官邸](C)AFP=時事

 8月末にインドネシア全土で発生したデモにより、国家警察の勢力が減退し、インドネシア国軍の勢力が伸長するとの見方が広がっている。

 デモは国会議員の住宅手当の増額への反発から大規模な抗議が発生し、一部が暴徒化した。今回のデモを過激化させたのは8月28日夜に警察の装甲車がオンライン配車タクシーの運転手を轢き殺した事件だった。このほかにもデモ隊鎮圧に催涙ガスを多用するなどの対応も批判された。

 警察に対する国民の不満が高まる中で、プラボウォ・スビアント大統領はジャカルタ首都圏を中心に国軍部隊を投入し、議会周辺や主要ショッピングモールなどの要所に国軍兵士が配置された。戒厳令や非常事態の発令はなく、形式上は国軍が警察を「支援」する枠組みだったが、国軍が国内治安に実質関与したとの印象を強め、存在感は増した。

 国軍はデモ隊に対する対応でも好感度を高めた。笑顔で話しかけ、水や支援物資を配るなど抑制的で、人道的な姿勢を前面に出し市民と距離を詰める動きをアピールした。この結果、国営メディアをはじめとした報道などを通じて「暴力的な警察」と「穏健な軍」という対比が形成されていった。

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