ひき肉・ザ・ワールド

執筆者:阿川佐和子2025年10月9日
ひき肉料理にハズレなし(写真はイメージです)

 献立はまだ決まっていないけれど、スーパーに来てしまいました。売り場を巡りながら食料品を一つ一つ睨みつける。なにをつくろうかなあ。おぼろげな記憶力を駆使して冷蔵庫内の光景を再現し、なにがあったか、なかったかを頭の中で検索する。ニンニクはまだあった。生姜がそろそろ足りないか。みょうがとシソの葉は一応買っておきましょう。サラダ用のレタスは残っていたかしら。ピーマンはあるけれど、青菜を一つ買っておこうかな。チンゲン菜かほうれん草か、はたまた小松菜か。

 サイドメニュー用の野菜や薬味になるものは次々と籠に放り込むものの、さてメインをどうする?

 そんなとき、とりあえず買っておこうと思うのは、豚バラの薄切り肉や鶏もも肉と並んで、なんと言ってもひき肉である。

 鶏、牛、豚、合い挽き。どれもよし。ひき肉さえあれば、なんとかなる。おいしい晩ご飯ができる。ひき肉料理にハズレなし! 私は肉売り場から「牛豚合い挽き肉」のパックを一つ取り上げて、籠に入れる。

 ひき肉には、子供心をくすぐる力がある。かたい肉のかたまりはまだ食べられないけれど、ひき肉なら咀嚼しやすいし消化もいい。食事創成期以来の仲。いわば幼馴染みのようなものである。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。