ポルトガル経済を牽引する「データセンター投資」の光と影
2025年10月1日
隣国スペインと“一蓮托生”の電力事情はポルトガルにとってボトルネックになる[ブラックアウトが発生し、消灯したスペインの信号機=2025年4月28日](C)EPA=時事
イベリア半島の西端にある人口1000万の国、ポルトガル。歴史を紐解けば、もともとはスペインとともに、海路を通じてアメリカやアジアを席捲した海洋国家だ。欧州連合(EU)の発足(1993年)後も長らく経済の停滞が続き、直近では2010年代に債務危機に陥って、辛酸を舐めている。
そのポルトガル経済が、このところ好調を謳歌している。
コロナショック前の2019年を基準(=100)とする指数で測ると、直近2025年4-6月期のポルトガルの実質GDP(国内総生産)は110まで水準を上げている(図表1)。一方、ユーロ圏全体では106.6にとどまっている。ドイツやフランス、イタリアの景気が低迷しているためだが、それを隣国スペインと一緒に打ち返しているのがポルトガルだ。
図表1 ポルトガルの実質GDP
(出所)ユーロスタット
ポルトガル経済の好調を支えているのは、北欧や西欧の高所得国からの観光客(インバウンド観光)による消費だ。これ自体はスペインと同様の構図だが、一方でポルトガル特有の強みとなる動きも出てきている。それは情報処理特需を反映したデータセンター産業の勃興だ。今後ポルトガルには、多くのデータセンターの建設が見込まれている。
生成AIなどに牽引され、世界は今、1990年代末のITバブル以来の情報処理特需に沸いている。その中でもカギを握るのが、大容量の情報を瞬時に処理・保存するデータセンターの存在だ。通信や建設、非鉄などのデータセンター関連株は、株価が世界的に急騰している。
記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。