トランプ政権と米連邦取引委員会(FTC)の緊張関係は不可避か[FTCの入口に掲げられた閉鎖通知。議会が歳出法案を可決できなかったため、10月1日から6年ぶりに政府機関が閉鎖された=2025年10月2日、米国・ワシントンD.C.](C)EPA=時事

関税より“NO KINGS!”

 第二次トランプ政権を日本から見れば、強権的な関税政策による自由貿易秩序の破壊に注目が集まる。WTO(世界貿易機関)秩序は、米国が覇権国となる過程で喧伝した「自由貿易主義」に応じ、世界が協調し構築してきたものだ。トランプ関税はそれを一撃で葬り去った暴挙である。だが、今のところ、米国内の消費者物価をさほどに押し上げてはいないため、圧倒的にメキシコ産が多いトマトを大量仕入れするイタリア料理店を除き、内向きの合衆国市民はさして関心を持たないようである。

 米国内でそれ以上に懸念されているのは、「権力分立=自由主義」の否定である。

 大統領府=連邦政府に対し一定の独立性・中立性を保つべきだとされてきたFRB(連邦準備制度理事会)のリサ・クック理事に対する解任命令、民主党の地盤であるワシントンD.C.やロサンゼルス市でのデモを理由とした州兵派遣の大統領令、コロンビア大やハーバード大など名門私大に対する補助金打ち切り等に通底するのは、独立機関に対する異例の政治圧力である。これに対し、デモが掲げたプラカードの “NO KINGS”とは、トランプ政権が権力分立(自由主義)を破壊しつつあることへの抗議である。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。