アルバニア「AI大臣」が映し出す「民主主義への失望」と「独裁へのノスタルジー」
2025年10月8日
世界中の政府がAIの導入を急ぐ背景には、単なる人員不足解消や効率重視のほかに、人間による民主主義への不満があるのかもしれない[世界初の人工知能(AI)閣僚となったアルバニアのディエラ=2025年9月18日](C)EPA=時事
これは人間の進歩と呼ぶべきか、長期的な堕落の始まりなのか。
バルカン半島の小国アルバニアで、世界初の人工知能(AI)大臣が誕生した。ディエラ(アルバニア語で太陽の意)という名の汚職対策・公共入札担当大臣である。9月18日のアルバニア議会でスクリーンに映し出された女性民族衣装姿のディエラは「個人的な野心や利害はない。人間にとって代わるのでなく支援するためにいる」と演説した。
アルバニアは汚職が深刻なことで知られ、その政治腐敗が欧州連合(EU)加盟承認の障害となっている。ディエラを任命したエディ・ラマ首相の狙いは、「100%腐敗を撲滅して公共事業の決定をする」との姿勢でEUにアルバニアの成熟国家ぶりをアピールすることにある。
AIが揺さぶる民主主義の根幹
調査団体である「国際透明性機構」によると、アルバニアの政府清廉指数は100点満点で42、欧州では最低クラスだ。トップはデンマークの90、ちなみに日本は71、米国は65。これを何とか改善したいというラマ首相の意欲は理解できる。ラマは5年以内のEU加盟を目指しているのだ。
記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。