10月8日、ドナルド・トランプ米大統領が、イスラエルとハマースの和平協議の「第一段階の合意」を発表した。

 ハマースによる人質の解放と、イスラエルによるガザからの一定程度の撤退が行われる見通しである。ハマースが全ての人質を解放するか、イスラエルがハマース殲滅のための攻撃を停止するかは未知数であり、今後も戦闘が続く可能性はあるが、2023年10月以降のガザでの大規模な戦争において、イスラエルとハマースは停戦と和平に向けての曲がり角を曲がったと言える。

 9月9日にイスラエルが、ハマースとの仲介国であるカタールの首都ドーハを空爆したことで、ガザの和平協議は暗礁に乗り上げたと思われた。だが、それによって生まれた中東地域の反発をも取り込んで、トランプ大統領が和平協議仲介に新たな推進力を与えた。それによってもたらされる結果の妥当性や正義といった是非や理非をひとまず脇に置けば、トランプ大統領がガザをめぐる中東政治に、過去3週間で大きな変化をもたらしたことは確かである。膠着したガザ情勢の打開となる可能性のある出来事である。

 イスラエルとハマースの今回の合意は、9月29日にトランプ大統領がイスラエルのネタニヤフ首相との会談に合わせて発表した20項目の包括的和平案第一段階をなすものである。

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