相次ぐ事業者の不正に厚労省も指導監査を強化する方針を打ち出しているが、「性善説」の姿勢から脱却できるかが課題だ(C)新潮社

「訪問看護」にはびこる不正

 高齢者介護の業界で2023年、ちょっとした「事件」があった。「老人ホーム」と言えば、特別養護老人(特養)ホームが長年、利用者数でトップだったのだが、この年、有料老人ホームの定員数が特養ホームを逆転したのだ。介護保険制度が始まった2000年以降、初めてのことだ。2024年時点では特養が約66万人、有料老人ホームが約67万人となった。

 特養ホームを運営するのは主に社会福祉法人。それに対し、有料老人ホームは株式会社など営利法人が中心だ。公的な性格を持つ特養ホームから、民間主体の有料老人ホームに主役が交代したことを示している。

 そして今、有料老人ホームの中でも急速に数を増やしているのが、末期がんや難病患者向けのタイプ。「住宅型」の有料老人ホームに訪問看護と訪問介護のステーションを併設し、看取りまで行うため、「ホスピス型住宅」などと呼ばれる。

 私は昨年以降、このホスピス型住宅について、東証プライム上場企業を含む複数の運営会社が不正・過剰な診療報酬を請求していた疑いを報じてきた。問題の「肝」は訪問看護。末期がんなどの患者への訪問看護は医療保険が適用され、多額の診療報酬を得られるからだ。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。