多国籍企業である組み立て企業から地場の部品企業へ、波及効果をどう作るか[自動車産業の製造拠点が集積するロスリン地区、独BMWの工場=2020年2月6日、南アフリカ・プレトリア](C)EPA=時事

 グローバルサウスの枢要国の一角である南アフリカであるが、その経済は低成長が続き、S&Pの格付も投資適格以下が続いている。特に製造業の低迷が課題となっており、本稿ではその要因と帰結について議論する。筆者は経済学のツールを用いて途上国の分析を行う開発経済学を専門としており、南アフリカの自動車産業についての企業データを用いた統計分析を行ったことがある1。また、後述する通り、本稿は南アフリカにおいて執筆した。

1人あたりGDPの低下が続く

 まず、世界銀行のウェブサイトより閲覧できるマクロ経済データに基づいて南アフリカ経済を概観してみる。アパルトヘイトが終焉し選挙によってネルソン・マンデラが大統領となった1994年には、南アフリカの1人あたりGDP(国内総生産)は4258ドルであった。その後、2000年代に入ってからは鉱物資源ブームにより南アフリカが産出する金や白金の国際価格が高騰したことにも後押しされて、15年後の2009年には5847ドルにまで成長した。しかし、その後の15年間は停滞し(それどころかいくらか衰退し)、2024年の時点での1人あたりGDPは5709ドルとなっている。なお、いずれの数字も2015年の物価を基準とした実質値であるため、そのままの比較が可能である。1994年の時点で南アフリカはサブサハラアフリカ(サハラ砂漠以南のアフリカ)全体のGDPの約4割を産出していたが、経済の低迷により2023年にはそのシェアは2割以下にまで低下しており、南アフリカのアフリカにおける影響力は縮小してきている。

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