トランプ政権は同志国とのAI分野の新たな多国間枠組み「パクス・シリカ」設立も発表した[「パクス・シリカ宣言」に署名した日本の山田重夫駐米大使(左)と米国務省のジェイコブ・ヘルバーグ経済担当次官=2025年12月11日、アメリカ・ワシントンDC](C)AFP=時事
「ジェネシス・ミッション」はAI国家戦略の「脳」
「人工知能(AI)によって世界の先頭に立つべく、あらゆる手段を講じる」――ドナルド・トランプ大統領は7月23日、こう明言した。その言葉どおり、トランプ政権はAIを国家戦略の中核に据え、連邦政府主導の体制を段階的かつ体系的に構築してきた。1月23日の「AI分野での米国の主導的地位を阻む障壁の排除」と題した大統領令を皮切りに、各種の施策は段階的に積み上げられてきた【チャート1】。
7月23日、①イノベーションの加速、②AIインフラの構築、③国際的なAI外交・安全保障を主導すること――の3本柱で構成された「AI行動計画」が公表された。同日には、行政AIの政治的バイアス排除(いわゆる「Woke AI」禁止)の大統領令、データセンター建設推進の大統領令も署名された。さらに、米国製AIモデルや半導体、クラウド基盤の輸出を促す大統領令も発令され、米国を中核とした「AIブロック」の形成を目指す姿勢を鮮明にした。これは、米国製のチップやクラウドに依存したAIインフラ、英語圏・同盟国向けに最適化された基盤モデル、米国主導のセキュリティ基準をセットで拡大することで、中国・ロシアの“対抗ブロック”構築を牽制する狙いがある。
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