ロシアは実質的に欧州諸国が向き合うべき問題として語られ、アメリカの安全保障リスクとして形容されていない[米露首脳後の記者会見を終え、握手を交わすトランプ大統領(右)とロシアのウラジーミル・プーチン大統領=2025年8月15日、アメリカ・アンカレジ](C)EPA/Sergey Bobylev/Sputnik/Kremlin Pool

 第2次トランプ政権は2025年12月4日に国家安全保障戦略(以下NSS2025)を発表した。政権1年目の12月に発表されたのは第1次政権と同じだが、位置づけや内容は大きく異なる。端的に言ってNSS2025は、冷戦後のリベラル国際主義という、リベラル色の濃いアメリカの対外政策上のイデオロギーと決別した上で、主権国家の並存と相互尊重という国際関係のイメージを前提に、総論的にはアメリカの対外経済関係の再編や民間投資を通じた経済的利益の拡大と、同盟国による防衛努力の慫慂を通じたアメリカの安全保障リスクの局限化を目指しつつ、地域的には西半球で覇権再構築、インド太平洋で対中経済関係の再編と対中抑止を進め、中東への軍事的関与を減らしつつ、欧州の安全保障を右派勢力支援と欧露関係の戦略的安定によって実現しようとする方針を打ち出したものだといえる。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。