文化や人的交流、軍事、エネルギーなどではロシアの影響力も依然として強い[「中央アジア+日本」サミットに参加した5カ国の首脳(左から、ウズベキスタンのミルジヨエフ大統領、タジキスタンのラフモン大統領、カザフスタンのトカエフ大統領、[日本の高市早苗首相を挟み]キルギスのサディル・ジャパロフ大統領、トルクメニスタンのセルダル・ベルディムハメドフ大統領=2025年12月20日、東京都内](C)EPA=時事

 この春、筆者はシンクタンクの調査のため、23年ぶりにタジキスタンの首都ドゥシャンベを訪問した。かつては豪華な大統領宮殿を除けば村のように小さな首都だったが、いまは高層ビルが立ち並び、同じ町とは思えないほどの変貌を遂げている。市内には中国製EV(電気自動車)のタクシーがあふれる。一方で、ロシアが国外に置く最大規模の基地も依然として残り、街を歩けば(ウクライナ帰りかもしれない)ロシア兵とすれ違う。ドゥシャンベの風景は、中央アジアで進む「大国の影響の重なり」を象徴していた。

 中央アジア5カ国(カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタン)は、ロシアが伝統的に「影響圏」とみなしてきた旧ソ連地域である。しかし近年の中国進出を受け、中露は中央アジアにおいて競争関係にありながらも、ロシアが安全保障、中国が経済を担うという暗黙の「分業体制」を敷いてきたとも言われてきた。ところが、ロシアのウクライナ全面侵攻などを受け、このバランスに変化の兆しがみられる。制裁下のロシアを迂回し、中国から中央アジアや南コーカサスを経て欧州へと至る「中央回廊(Middle Corridor)」の貿易量は増加の一途をたどる。

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