おいしい旅

執筆者:阿川佐和子2026年1月10日
カルボナーラやほうれん草のリゾット、イタリア料理は美味しいですよね(写真はイメージです)

「いちばん好きな料理はなんですか?」

 そう聞かれることがときどきある。自分から人様に問うこともある。人に訊ねられた際、少し考えたのち、

「中華料理か、イタリア料理かなあ」

 そう答えるのが常である。どうも私はニンニクが好きらしい。

 もちろんニンニクを使わない料理にもおいしいと思うものはたくさんある。天ぷらも焼き鳥も、お寿司だって大好きだ。和食の名店にて、ずいきの吉野煮というものをいただいたとき、世の中にこれほどおいしいものがあるのかと驚愕した覚えがある。吉野葛のとろみに包まれて、薄く味つけされた薄緑色のずいきのトロンとした舌触り。拝みたくなるような上品な味わいだった。

 日本料理でそんな感動の瞬間に出くわすこともあるけれど、ニンニクのたっぷり入った中華料理やイタリア料理の魅力はまた、別のものであろう。

 静かな反応ではないかもしれない。むしろ、「ギャー、ちょっとなにこれ? おいしい!」と、ご飯茶碗を左手に掲げ、あるいはパンでお皿に残ったソースをかき集めながら叫ぶ、騒ぐ、はしゃぐ。ニンニク料理には食べる者を異様に興奮させるなにかがある。

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