やっぱり残るは食欲
やっぱり残るは食欲

おいしい旅

執筆者:阿川佐和子 2026年1月10日
タグ: 日本
エリア: アジア
カルボナーラやほうれん草のリゾット、イタリア料理は美味しいですよね(写真はイメージです)

「いちばん好きな料理はなんですか?」

 そう聞かれることがときどきある。自分から人様に問うこともある。人に訊ねられた際、少し考えたのち、

「中華料理か、イタリア料理かなあ」

 そう答えるのが常である。どうも私はニンニクが好きらしい。

 もちろんニンニクを使わない料理にもおいしいと思うものはたくさんある。天ぷらも焼き鳥も、お寿司だって大好きだ。和食の名店にて、ずいきの吉野煮というものをいただいたとき、世の中にこれほどおいしいものがあるのかと驚愕した覚えがある。吉野葛のとろみに包まれて、薄く味つけされた薄緑色のずいきのトロンとした舌触り。拝みたくなるような上品な味わいだった。

 日本料理でそんな感動の瞬間に出くわすこともあるけれど、ニンニクのたっぷり入った中華料理やイタリア料理の魅力はまた、別のものであろう。

 静かな反応ではないかもしれない。むしろ、「ギャー、ちょっとなにこれ? おいしい!」と、ご飯茶碗を左手に掲げ、あるいはパンでお皿に残ったソースをかき集めながら叫ぶ、騒ぐ、はしゃぐ。ニンニク料理には食べる者を異様に興奮させるなにかがある。

 そんなわけで、唐突に話を展開させますが、このたびイタリアへ旅に出た。

カテゴリ: カルチャー
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執筆者プロフィール
阿川佐和子(あがわさわこ) 1953年東京生まれ。報道番組のキャスターを務めた後に渡米。帰国後、エッセイスト、小説家として活躍。『ああ言えばこう食う』(集英社、檀ふみとの共著)で講談社エッセイ賞、『ウメ子』(小学館)で坪田譲治文学賞、『婚約のあとで』(新潮社)で島清恋愛文学賞を受賞。他に『うからはらから』、『レシピの役には立ちません』(ともに新潮社)、『正義のセ』(KADOKAWA)、『聞く力』(文藝春秋)など。
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