ロシア資産の活用を諦めたEUの暗中模索

執筆者:土田陽介2025年12月27日
EUは支援コストをどこまで負担できるか[EU首脳会議でウクライナ支援を訴えたゼレンスキー大統領=2025年12月18日、ベルギー・ブリュッセル](C)AFP=時事

 欧州連合(EU)は、ウクライナの財政支援のために自らが凍結していたロシア資産を“活用”するとしていたが、結局はそれを諦めたようだ。停戦に向けた展望が描き難いこともあるのか、EUのウクライナ支援の在り方は、どこか“走りながら考える”姿勢を強めていた。今回の決定はそうしたEUの姿を象徴するような出来事だった。

 以下、経緯を確認してみたい。そもそもウクライナの財政は、2026年4月にも資金がショートする。そのためEUの執行部局である欧州委員会は、同年から2年間で900億ユーロ(約16兆円)をウクライナに無利子で融資するに際し、ロシアがユーロクリアに預けている資産1850億ユーロを原資に当てる構想を12月3日に発表した。

 ベルギーにあるユーロクリアは、ルクセンブルクにあるクリアストリームと並んで、世界で2つしか存在しない国際証券集中保管機関の1つ。その役割は、株式や債券など世界中のあらゆる有価証券を保管・決済することにある。もちろん、世界各国の有力金融機関の殆どが参加しており、ロシアの有力金融機関もまた同様に参加していた。

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