欧州連合(EU)は、ウクライナの財政支援のために自らが凍結していたロシア資産を“活用”するとしていたが、結局はそれを諦めたようだ。停戦に向けた展望が描き難いこともあるのか、EUのウクライナ支援の在り方は、どこか“走りながら考える”姿勢を強めていた。今回の決定はそうしたEUの姿を象徴するような出来事だった。
以下、経緯を確認してみたい。そもそもウクライナの財政は、2026年4月にも資金がショートする。そのためEUの執行部局である欧州委員会は、同年から2年間で900億ユーロ(約16兆円)をウクライナに無利子で融資するに際し、ロシアがユーロクリアに預けている資産1850億ユーロを原資に当てる構想を12月3日に発表した。
ベルギーにあるユーロクリアは、ルクセンブルクにあるクリアストリームと並んで、世界で2つしか存在しない国際証券集中保管機関の1つ。その役割は、株式や債券など世界中のあらゆる有価証券を保管・決済することにある。もちろん、世界各国の有力金融機関の殆どが参加しており、ロシアの有力金融機関もまた同様に参加していた。
そのためEUは、ロシアがウクライナに侵攻した直後に、ロシアがユーロクリアに預けている金融資産を凍結する制裁を科すことで、ロシアの身動きを封じようとしたのである。そしてEUは、早い段階からウクライナ支援の財源にロシア資産を充てる可能性につき議論していた。ロシアによるウクライナでの破壊行為を抑制する意図からだ。
欧州委員会の方針を受けて、EUの閣僚理事会は12月12日、EUが凍結したロシア資産に関して、これまで必要だった半年ごとの更新の承認を不要とする決定を下した。これによってEUは、ロシア資産を無期限で凍結することが可能となり、ロシア資産の活用に向けた道が拓かれた。残るは、18日からのEU首脳会議での合意だけだった。
構想自体に無理があったEUの“ロシア資産活用案”
このEU首脳会議での合意に待ったをかけたのが、ユーロクリアを抱えるベルギーだった。反発するロシアがEUへの対抗措置として、ロシア国内にあるユーロクリアの資産(凡そ160-170億ユーロ)を差し押さえた場合、多大な損害を被るためである。ベルギーはその場合の補償をEU各国に対して求めたが、それに各国が難色を示した。
結局EUは、親ロの立場をとるチェコとハンガリー、スロバキアを除く24カ国で協力して資金を調達し、それを基に、ウクライナへ無利子で融資を行うことで合意に達した。最初からこうしたスキームを選択していれば、問題は少なかったはずである。そもそもロシア資産の活用など、国際法的に考えても、かなり問題がある構想であった。
にもかかわらず、なぜEUは、ユーロクリアに預けられていたロシア資産の活用に拘ったのか。
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