スルメイカ漁獲可能枠「なし崩し増」が日本漁業にどれだけ「逆効果」か説明したい

執筆者:片野歩 2026年2月10日
タグ: 日本
エリア: アジア
2000年頃と比べて、スルメイカの漁獲量は約10分の1に減少している(写真は筆者撮影)
スルメイカの漁獲量がTAC(漁獲可能量)上限に達した昨年、水産庁は漁業者団体の要望に応じ二度にわたって増枠した。こうした対応は短期的には漁業者を救うように見えて、実は「逆効果の治療」になってしまう。なぜか。持続可能な漁業のために、日本が学ぶべきノルウェーの水産資源管理の方法を確認する。

 

本当に環境の変化や外国漁船のせいなのか

 日本人にとってなじみの深いスルメイカ。刺身・揚げ物・干しスルメをはじめ料理の幅がとても広い食材です。そのスルメイカは、近年大不漁に陥っています。スーパーなどで1杯100円前後だった価格が、不漁の影響で高騰しその数倍の価格になっていることはお気づきの通りです。

農水省データより筆者作成 拡大画像表示

 上のグラフはスルメイカの漁獲量の推移を示しています。30万~40万トン前後が漁獲されていた2000年頃と比べれば、現在はその10分の1に過ぎないのです。

 そのスルメイカの漁獲量が、昨年(2025年)の秋から年末にかけて予想外に増えました。しかし、資源管理のために設定されているTAC(Total allowable catch=漁獲可能量)規制の数量を超えてしまい、イカを獲ることができなくなりました。漁業者団体などから「イカが獲れないのは死活問題だ」といった声が上がり、それに応える形で水産庁はTACを1万9200トン→2万5800トン→2万7600トンと増枠していきました。漁業者の声に押されてゴールポストを動かしたのです。さらにスルメイカの2026年度の漁獲枠について、水産庁は2月4日、昨年度比約2.5倍の6万8400トンに増やす案を漁業関係者との意見交換会で示しました。

カテゴリ: 医療・サイエンス
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執筆者プロフィール
片野歩(かたのあゆむ) Fisk Japan CEO、東京海洋大学特任教授。1963年生まれ。早稲田大学卒業後、水産会社勤務を経て現職。長年北欧を主体とした水産物の買付業務に携わる。水産物の持続可能性を議論する国際会議「シーフードサミット」で日本人初の政策提言部門最優秀賞を受賞。著書に、『魚はどこに消えた?』『日本の漁業が崩壊する本当の理由』(いずれもウェッジ社)、『日本の水産業は復活できる!』(日本経済新聞出版社)などがある。
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