2000年代以降の石油産業国営化で人材流出が続き、投資不足からインフラも老朽化している[マラカイボ湖の南にある石油掘削装置=2026年1月31日、ベネズエラ・ズリア州カビマス](C)AFP=時事

 2026年の国際エネルギー情勢は、新年早々に発生したベネズエラの首都・カラカスへの米軍の軍事攻撃とベネズエラの現職大統領の拘束、さらには米国への移送という衝撃的な事件によって幕が開くことになった。現地時間の1月3日、米軍の特殊部隊などが、カラカスを攻撃、ニコラス・マドゥーロ大統領を拘束し、麻薬犯罪などの罪で裁判にかけるため米国に移送した。ドナルド・トランプ大統領は、この作戦の「成果」を発表し、合わせてベネズエラの石油を米国の管理の下に置く考えを示した。米軍による重要な産油国、ベネズエラへの軍事攻撃と大統領の拘束という衝撃的な「地政学リスク」事象の発生と、米国によるベネズエラ石油の管理、という2つの新展開が国際エネルギー情勢を揺さぶることになったのである。本稿では、この影響を様々な角度から検討することとしたい。

市場には「供給増」の先読みも

 第1に、地政学リスクによる原油価格への影響という観点がある。通常、重要な産油国や供給源・ルートにおける地政学リスクの発生は、他の条件が一定ならば、原油価格を上昇させる作用を持つ。先物市場では市場参加者の先読みが大きな影響力を持っており、地政学リスクの発生は、石油供給支障を織り込んで原油価格を上昇させることになる。今回のベネズエラへの軍事攻撃もまさにその展開を辿り、当初原油価格は地政学リスクに反応して上昇を示した。しかし、市場はさらに先を読み、実際には今回の事象では石油供給支障は発生しない可能性が高く、むしろ、後述する理由でベネズエラからの石油供給は増えるかもしれない、という予想が広がることで原油価格は反落することになった。

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