第5部 再起する日常(6) 前線都市の素顔
2026年3月15日
『ススピリネ』スーミ支局のミニ博物館に展示されているドローンの翼とスポーツ担当記者オレクサンドル・カチャーノ。戦場や被弾場所で取材する記者が集めて公開している[筆者撮影]
前線都市への旅が実現したのは、偶然からだった。
2026年1月半ば、4カ月ぶりにキーウを訪ねた筆者は、旧知のウクライナ公共放送『ススピリネ』会長ミコラ・チェルノティツキー(42)と中心部のレストランで落ち合った。ビールを片手に軽い食事をつつきつつ、情報交換と世間話を続ける中で、彼がふと漏らした。
「来週スーミに行くんだ。片付けなければならないことがあって」
スーミは、ウクライナ東北部スーミ州の州都である。古い街並みと美しい教会が残る地方都市だが、ロシア国境に近いため、連日の砲撃にさらされていた。ミコラは会長に就任する前、『ススピリネ』のスーミ支局長を務めており、その関係で処理する案件が生じたらしかった。
スーミはかねて、筆者が訪ねようと考えていた街である。大きな被害が出ているようだが、ウクライナ東部や南部の戦線に比べて外国メディアの注目度も高まらず、状況がつかめないでいたからである。交通が便利とは言いがたく、前線だけに当局の監視も厳しいと聞いたが、現地に詳しいミコラのお供としてなら何とかなりそうである。
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