メルツ首相は、ドイツの脱原発はすでに“回帰不能点”にあるとしている[欧州理事会の会合を終えたメルツ首相=2026年3月19日、ドイツ・ベルリン](C) EPA=時事

ドイツで強まるクラウディングアウトの圧力

 3月17日付の米ブルームバーグは、ドイツ政府が6000億ユーロ(約110兆円)の防衛予算を投じるため、ドイツの景気回復に弾みがつく可能性があると報じた。またブルームバーグは、2028年までに防衛産業が経済成長率を0.5%押し上げるとの、スイスの有力銀行UBSのアナリスト、フェリックス・ヒューフナー氏の見方を紹介した。

 確かに、ドイツでは多くの防衛関連企業が政府からの受注を増やしており、業績が改善している。代表的な企業はラインメタルだ。2025年の売上高は前年比3割増の99億ユーロに達し、営業利益も18.4億ユーロと前年から4.5億ユーロ増加した。こうした好調な業績を反映し、同社の株価は2025年の年明け以降、約2.5倍に上昇している(図表1)。

図表1    ラインメタルの株価
(出所)フランクフルト証券取引所

 とはいえ、日本が実感しているように、企業が利益を稼いだからといって、景気は必ずしも良くなるわけではない。企業の業績が改善したところで、その所得が国民に配分されるとは限らないためだ。現に、ラインメタルが生産を強化しているのは、ドイツ国内の工場というよりも、ウクライナやウクライナに近い中東欧の国々の工場だ。

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