世界最大になると期待される中国の水処理市場で、世界最高レベルの技術を持つ日本の水処理膜メーカーに追い風が吹き始めた。 世界人口の五分の一を占める中国だが、降水などで得られる淡水は世界全体の〇・〇一七%の六千百立方キロメートル。一人当たりでは世界平均の三分の一程度しかなく、慢性的な水不足に陥っている。さらに近年の都市化や工業化で使用量が急増し、水質汚染も深刻化する中、水不足の解消と河川の汚染防止は喫緊の課題。中国は水資源が豊かな南方の水を、水不足に悩む北方に送る「南水北調」プロジェクトなどを進める一方、ここ十年間で約一兆元(約十三兆円)を投入、水資源の汚染対策に努めてきた。 企業に対しては、工業廃水の浄化処理に取り組むよう求めており、中国人環境学者は「中小企業は問題が依然残っているが、大企業は対処済みだ」と解説する。しかし、七月には湖南省で化学工場周辺住民がカドミウムに汚染される中毒事件が起こり、大規模デモに至った。また八月には陝西省で児童の鉛中毒事件が発生するなど、各地で工業廃水を原因とした汚染事件が相次いでいる。 日系メーカーなどによると、中国企業の廃水の浄化設備は安価で技術レベルの低い中国製のものが多い上、「当局の監査が終われば、設備を稼働させず、従来通り垂れ流してしまう」状況で、国土資源省は全国の農地の一割以上が重金属に汚染されているとみている。

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