イラン核開発をめぐる各国情報機関の暗躍

執筆者:春名幹男2009年11月号

 イランの核兵器開発をめぐり、米ピッツバーグとスイス・ジュネーブで繰り広げられた外交劇。米国の外交力と情報機関の能力が試される形になった。 主要二十カ国・地域(G20)首脳会議の最中飛び込んだ「イランが第二のウラン濃縮施設」のニュース。オバマ、サルコジの米仏大統領とブラウン英首相がそろって緊急会見し、「安保理決議違反」と非難した。 しかしその六日後、国連安保理常任理事国にドイツを加えた六カ国とイランのジュネーブ交渉は波乱なく終了、オバマ大統領が「建設的始まり」と評価するほど前向きの結果を出した。 第二のウラン濃縮施設は国際原子力機関(IAEA)が査察する。イランがこれまで生産した申告済み低濃縮ウランの約七五%に当たる約一・二トンをロシアとフランスへ移送、約二〇%の濃度に高めて、イランに戻し、研究炉でアイソトープ生産用に使用するというのだ。 一部の軍縮専門家はこの暫定合意を高く評価している。 しかし、匿名のフランス政府高官は「これでは解決にならない」と不満を漏らし、ジョン・ボルトン元米国連大使は「イランの勝利」と皮肉った。 さらに、IAEA内部からは、イランの核兵器開発が抜き差しならない段階に達していることを示す重大な情報がリークされた。イランに対して生ぬるい対応に終始し、間もなく退任するエルバラダイ事務局長に対する不満の表明でもあった。

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