昨年秋以降、不況で仕事が減るなか、多くの企業で残業削減が叫ばれ、見かけ上の残業時間の数値は減少している。しかし、実は「サービス残業」が急増している。 労働者と企業が回答する労働時間の差を「サービス残業」と定義すると、バブル崩壊後の一九九〇年代後半には年間四百時間を超えていた。 二〇〇〇年代に入ると、減少の一途をたどり、昨年には三百時間近くとなった。しかし、 〇九年上半期には三百五十時間へと急増している。わずか半年で、これほど急増したのは過去二十年近くない異例の事態だ。 なぜ、不況期にサービス残業が急増するのか? 本連載ではこれまで企業要因として、業務の平準化・効率化に着手していない職場が多いと指摘してきた。 今回は、従業員要因について述べたい。筆者はワークライフバランス(WLB)には、(1)業務をオープンにして従業員同士で共有する仕組み(2)絶えざる業務の改善(3)思いやり(意識面)の三つの要素が必要と考えている。 それぞれに対して、社員には反発する理由がある。まず、エース社員の場合は、(1)ノウハウは抱え込んだ方が「得」と考えやすい(2)業務改善をして早く業務を終わらせても、さらに仕事がふってくるという考えに陥りやすい(3)同僚が休むと自分に負荷がかかるから困る、といった具合だ。

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