温暖化ガス25%削減で産業構造の大胆な転換を

執筆者:新田賢吾2009年12月号

現状の維持を前提に“乾いた雑巾”論を唱えても意味はない。今回の宣言を好機ととらえ、大胆に産業構造を組み替えるべきだ。 戦後、日本が世界に発信したメッセージで最もインパクトの大きかったのは、「戦争放棄」と「戦力の不保持」を表明した憲法第九条だろう。では、二番目は何か。 評価は分かれるが、鳩山首相が九月初めに表明した「地球温暖化ガス二五%削減」はその有力候補になるだろう。環境対応で世界をリードしているつもりの欧州連合(EU)ですら二〇二〇年までに一九九〇年比で二五%削減は驚異的な数字だったからだ。人類全体の利益のために自らが率先して高邁な理想と高い目標を掲げたという点では「二五%削減」は“環境の憲法第九条”といえるかもしれない。 だが、日本の経済界の評価は厳しい。麻生前首相が六月に発表した「〇五年比で一五%削減(九〇年比換算では八%削減)」に対してすら、日本経済団体連合会(経団連)は、達成は難しいと不満を漏らしていたからだ。「九〇年比二五%削減」は日本の経済界の主流を自負する鉄鋼、電力、化学、石油など重厚長大型産業にとってはまさに「宇宙人の発言」だったに違いない。アプローチを変えろ 二酸化炭素が地球温暖化の原因ではないとの説を主張する学者、経済人も依然いるが、温暖化ガスの排出削減は世界の専門家の多くが必要性を認め、すでに国際合意になっている。今、必要なのは地球全体でいかに削減の実効性を上げるかで、自らの削減幅を少しでも小さくしようとするエゴイズムではない。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。