[ワシントン発]ワシントンDC滞在も二カ月目である。中東関係の研究機関や団体への訪問を繰り返し、中東政策論が作られる場を肌身で感じようと試みている。 ワシントンへの中東をめぐる情報の集まり方は圧倒的である。「連日」の「朝昼晩」に、必ずどこかで中東関連の催しが行なわれている。米国各地の主要大学や、英国、中東諸国から主要な研究者が訪れてセミナーや会議で講演し、知識や政策を「売る」見本市のような場所である。多くは一般公開なので、なるべく足を運ぶ。講演者だけでなく、それぞれの場所にどのような人が現れ、どのような議論や私語を交わしているか、いわば「人類学調査」を行なうのが滞在の目的である。 ワシントンの数ある大学の中でも目立つのは、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院(SAIS)、ジョージ・ワシントン大学、ジョージタウン大学だろう。SAISはアラブ・中東論の著名教授を代々抱えてきた。現在はアラブ思想史・現代アラブ社会論のフアード・アジャミーが筆頭教授である。『歴史の終わり』の著者フランシス・フクヤマも中東を専門としており、その下でイラン・イスラエル・米国の水面下の関係を博士論文にまとめたトリタ・パルスィは、全国イラン系アメリカ人評議会(NIAC)を組織して、米イラン関係の新時代を切り開く若者として期待されている。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。