[パリ発]実際以上の成果を打ち上げて演出しがちなフランス外交にしては、慎み深い行動だった。サルコジ大統領の特使としてラング元文化相が十一月に平壌を訪問、両国の国交樹立の条件を探った一件だ。九日に平壌に到着した元文化相は、十日に朴宜春・外相と、十二日に金永南・最高人民会議常任委員長と会談した。ただ、仏大統領府の発表は型どおり、ラング氏本人もメディアへの露出を極力避け、目立ちたくない姿勢がありありだった。 フランスは欧州の主要国で唯一、北朝鮮と外交関係を結んでいない。それがいよいよ動き始めた背景に政治的な意図は薄く、核開発を巡って駆け引きを続ける米朝に割って入る気などさらさらないようだ。そこは、自国の企業振興のためなら何でも厭わないビジネスマン大統領サルコジ氏。むしろ、オバマ米政権の下で緊張がやや緩和した情勢を目ざとく見極め、仏企業の投資や参入の布石をこっそりと打とうとしたとみるのが正解だろう。 戦後、ドゴール大統領の下で米国との距離を置き、独自の外交を展開したフランスにとって、米国にもソ連にもくみしない国々はある種の盟友だった。チトー大統領のユーゴスラビア、チャウシェスク大統領のルーマニアはその代表だ。ソ連と中国との間で微妙なバランスを取ってきた北朝鮮も、決して遠ざけるべき国ではなかった。

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