フランスがミッテラン人脈で探る北朝鮮ビジネス

執筆者:国末憲人 2010年1月号
エリア: ヨーロッパ

[パリ発]実際以上の成果を打ち上げて演出しがちなフランス外交にしては、慎み深い行動だった。サルコジ大統領の特使としてラング元文化相が十一月に平壌を訪問、両国の国交樹立の条件を探った一件だ。九日に平壌に到着した元文化相は、十日に朴宜春・外相と、十二日に金永南・最高人民会議常任委員長と会談した。ただ、仏大統領府の発表は型どおり、ラング氏本人もメディアへの露出を極力避け、目立ちたくない姿勢がありありだった。 フランスは欧州の主要国で唯一、北朝鮮と外交関係を結んでいない。それがいよいよ動き始めた背景に政治的な意図は薄く、核開発を巡って駆け引きを続ける米朝に割って入る気などさらさらないようだ。そこは、自国の企業振興のためなら何でも厭わないビジネスマン大統領サルコジ氏。むしろ、オバマ米政権の下で緊張がやや緩和した情勢を目ざとく見極め、仏企業の投資や参入の布石をこっそりと打とうとしたとみるのが正解だろう。

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執筆者プロフィール
国末憲人(くにすえのりと) 東京大学先端科学技術研究センター特任教授 1963年岡山県生まれ。85年大阪大学卒業。87年パリ第2大学新聞研究所を中退し朝日新聞社に入社。パリ支局長、論説委員、GLOBE編集長、朝日新聞ヨーロッパ総局長などを歴任した。2024年1月より現職。著書に『ロシア・ウクライナ戦争 近景と遠景』(岩波書店)、『ポピュリズム化する世界』(プレジデント社)、『自爆テロリストの正体』『サルコジ』『ミシュラン 三つ星と世界戦略』(いずれも新潮社)、『イラク戦争の深淵』『ポピュリズムに蝕まれるフランス』『巨大「実験国家」EUは生き残れるのか?』(いずれも草思社)、『ユネスコ「無形文化遺産」』(平凡社)、『テロリストの誕生 イスラム過激派テロの虚像と実像』(草思社)など多数。
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