
EU唯一の安定政権として米欧の橋渡し
メローニはその後、2012年に「イタリアの同胞」結成に参加し、14年からは党首を務めている。2022年の総選挙で勝利を収め、首相に就任した。
イタリア政治取材が長い独紙『フランクフルター・アルゲマイネ』ローマ支局長のマティアス・ルエブ(62)が評価するのはむしろ、メローニがその後も政権を安定して運営している点である。
「2年以上を経て、彼女の政党は依然として力を保ち続けています。与党の中道右派連合内部だけでなく、イタリアの政党全体を見ても最も強い影響力を持っています」
政党支持率は、「同胞」が30%近くを得ており、いずれも9%前後にとどまる連立相手のフォルツァ・イタリアや「同盟」を大きく凌ぐ6。これが、内閣での主導権確保をメローニに許し、閣内が結束を保つことにつながっている。
「また彼女自身への支持も40%程度あり、国内で最も人気の高い政治家の1人であり続けています。これは、戦後イタリアの政治ではあまりない現象です。ここでは通常、人気が急上昇して急降下する。そのいい例が、神童と言われた元首相のマッテオ・レンツィ(50)です。メローニに対しても、本来なら人々はもう飽きているはず。しかしそうはならず、彼女はパワフルで、高い信頼度を保ったままです。5年の任期を全うする勢いです」
ルエブはまた、この政権基盤の強さが、欧州でのメローニの発言権も支えていると見る。
「EU内で安定政権はメローニ以外ありません。ドイツ首相のオラフ・ショルツ(66)は終わりですし、フランス大統領のエマニュエル・マクロン(47)もスペイン首相のペドロ・サンチェス(53)も弱体化している。メローニが強い立場にいるからこそ、トランプの米国と欧州との橋渡しをする役割も担えます。イタリアがこのような決定的な地位に立つのはたぶん初めて、あるいはベルルスコーニ以来といえるかもしれません」
「米欧の仲介役を務めるにあたっては、メローニが2023年、G7加盟国で唯一イタリアが参加していた中国の一帯一路構想からの離脱を通告したのも重要でした。中国に近すぎないと示すとともに、西側の一員であることを明らかにしたからです。彼女自身はこの出来事をあまり表に出そうとせず、『中国とも良好な関係を築いている』と言っていますが」
波乱要因は連立与党に
一方で、メローニ政権がいつまでも安泰だとは、ルエブは考えていない。

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