新たな欧州の盟主か、メローニが主導する「ポスト・ポピュリズム」時代(上)

執筆者:国末憲人 2025年4月10日
エリア: ヨーロッパ
メローニ政権は、言うこととすることがいつも少し違う――その手法は、少なくともこれまではうまくいっている[2025年4月9日、イタリア・ローマ](C)AFP=時事
右翼ポピュリスト政治家の定番だったEU攻撃を控え、むしろ積極的にかかわることでEUの姿を変えようとする。保守強硬派としてのレトリックを駆使しながら、実際には穏当で現実的な政策を遂行する。ジョルジャ・メローニのこうした巧みな二面性は、イタリアの連立政権に結束をもたらし、対米関係と対EU関係で緊密な連携態勢を築いたと評される。恵まれない少女時代に政治に目覚め、31歳という異例の若さで閣僚に任命されて現実との妥協を身に着けたメローニは、政治構造の転覆を訴える破壊のポピュリズムを新たな保守主義へと生まれ変わらせるのかもしれない。【現地レポート】

 欧州政治で近年生じた顕著な変化の一つは、イタリア首相ジョルジャ・メローニ(48)の台頭だろう。扱いが難しい米トランプ政権幹部らと対話できる関係を結び、ロシアに対しては毅然とした態度を示して世論を牽引する。国内でも、中道から右翼にまで広がる連立内閣を束ね、世論の支持を得て無難な政権運営を続けている。ドイツでショルツ政権が崩壊し、フランスのマクロン政権が少数与党となって四苦八苦する中で、「欧州で最も安定した政権はイタリア」という、かつてない現象を生み出した。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
国末憲人(くにすえのりと) 東京大学先端科学技術研究センター特任教授、本誌特別編集委員 1963年岡山県生まれ。85年大阪大学卒業。87年パリ第2大学新聞研究所を中退し朝日新聞社に入社。パリ支局長、論説委員、GLOBE編集長、朝日新聞ヨーロッパ総局長などを歴任した。2024年1月より現職。著書に『ロシア・ウクライナ戦争 近景と遠景』(岩波書店)、『ポピュリズム化する世界』(プレジデント社)、『自爆テロリストの正体』『サルコジ』『ミシュラン 三つ星と世界戦略』(いずれも新潮社)、『イラク戦争の深淵』『ポピュリズムに蝕まれるフランス』『巨大「実験国家」EUは生き残れるのか?』(いずれも草思社)、『ユネスコ「無形文化遺産」』(平凡社)、『テロリストの誕生 イスラム過激派テロの虚像と実像』(草思社)など多数。
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