【Explainer】米国で麻疹(はしか)が増加、知っておくべきこと

2025年4月12日
タグ: 健康 感染症
エリア: 北米
MMRワクチンを2回接種すると、麻疹に対する予防効果は97%に達する (C)REUTERS/Shannon Stapleton
世界で最も感染力の強い感染症の一つである麻疹(はしか)は、米国では2000年に根絶が宣言された。しかし近年の「ワクチンは安全ではない」という科学的根拠のない主張によって、米国の子どもたちのワクチン接種率は低下、大規模な集団感染が再び発生するようになっている。

[ロイター]麻疹によりテキサス州で2人目の子どもが死亡した。2025年初めの数カ月間に報告された米国の麻疹症例数は、2024年の年間総数をすでに上回っている。

 テキサス州では505例が報告され、オクラホマ州、ニューメキシコ州、カンザス州にも拡大している。アメリカ全体では22州で600例以上が確認された(米政府データによる)。

なぜ今、麻疹に警戒すべきなのか

 WHO(世界保健機関)とUNICEF(国連児童基金)によれば、欧州で2024年に報告された麻疹症例数も前年の2倍の12万7350件に達し、過去25年間で最多となった。ワクチンが導入される1963年までの10年間には、米国では年間300万~400万件の麻疹症例が主に子どもを中心に報告されており、4万8000人が入院し、400~500人が死亡していた。

 麻疹による合併症には、耳感染、聴力喪失、肺炎、咽頭炎、下痢、失明、脳の腫れなどがあり、健康な子どもであっても重症化や死亡の危険がある。ワクチン未接種の妊婦が感染すると、早産や低体重児のリスクがある。米疾病対策センター(CDC)によれば、米国内でワクチンを接種していない人が麻疹にかかった場合、5人に1人が入院を必要とするという。

感染を防ぐには?

 最も効果的な予防策はワクチン接種であり、単独の麻疹ワクチン、あるいはおたふくかぜ・風疹を含むMMRワクチン(麻疹・おたふくかぜ・風疹混合ワクチン)、さらに水痘を加えたMMRVワクチンとして接種される。ビタミン剤や薬物に麻疹の予防効果は認められていない。

 MMRワクチンを2回接種すると、麻疹に対する予防効果は97%に達する。通常は生後12~15カ月で1回目を接種し、4~6歳で2回目を接種する。

 1957年以前に生まれた成人は、子どもの頃に自然感染して免疫を獲得しているとみなされている。麻疹にかかった記憶がなく、接種歴も不明な成人はワクチンの接種が推奨される。また、過去にブースター接種を受けてから時間が経っており、集団感染の恐れがある地域では、再度のブースター接種が勧められる。

小児医療センターの入り口に掲げられた麻疹への注意を呼びかける掲示[2025年3月14日、アメリカ・ニューヨーク州ニューハイドパーク](C)REUTERS/Annie Rice

集団感染を防ぐには?

 麻疹の集団感染を防ぐには、

カテゴリ: 医療・サイエンス
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