実は「核の傘」議論と密接に絡む普天間問題

執筆者:春名幹男2010年1月号

「日本は、どんな拡大抑止が必要だと考えているの?」 二〇〇九年三月ワシントンでオバマ政権入りが内定した長年の友人と昼食を共にした際、いきなりそんな質問をされて驚いた。返答に窮していると、彼は「日本の本土への核兵器配備なんてどうか」などと拡大抑止を強化する具体策を挙げ始めた。 拡大抑止とは、言い換えれば「核の傘」のことだ。日本は、中国や北朝鮮からの攻撃に対する抑止力として、同盟国米国の核戦力に依存している。「だが、いずれにしても非核三原則があるので難しい」。私はそう答えるほかなかった。 帰国して、当時の自民党政権に近い元政府高官に「日米間で拡大抑止について話し合っているのか」と尋ねると、彼は黙ってうなずいた。 やはり、日米間で核の傘の強化に関するやりとりをしていたのだ。さらにその半年後、問題の概要をつかむことができた。 九月の政権交代後、普天間飛行場移設問題に関する米国側の論理について調べていた時だ。 米議会決議で設置された「米国の戦略態勢に関する委員会」(委員長・ペリー元国防長官)の最終報告書の中に、この問題に関係する部分があった。「(アジアにおける)拡大抑止は一部のロサンゼルス級原潜搭載の核巡航ミサイル、トマホーク対地攻撃核ミサイル(TLAM/N)に大きく依存している。この兵器は二〇一三年に退役の予定である。(中略)委員会の作業で、アジアの一部同盟国がTLAM/Nの退役を強く懸念していることが明らかになった」

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