「薬価維持特例」への期待と不安

執筆者:清水常貴2010年1月号

 望外の喜びかもしれない。「夢にまで見た」と武田薬品工業の長谷川閑史社長が語った「薬価維持特例」が実現する。中央社会保険医療協議会(中医協)薬価専門部会は「新薬創出・適応外薬解消等促進加算」(仮称)と名前を変えて試行的に導入することにした。薬価維持特例は大手製薬メーカーが二〇〇六年に提唱。一二年度からの導入を要望していた。 〇九年、二年おきの薬価本調査に合わせて議論される時期を迎えた折、医師の診療報酬引き上げを重視する民主党政権の誕生で、見送られるかに見えた。が、中医協の診療側委員が医師会から民主党選任の委員に代わった途端、中医協での議論が活発化。新薬創出加算として、とりあえず一〇年度限りの試行的措置を認めることになったのである。 薬価維持特例とは、特許期間中の新薬(先発薬)は特許が切れるまで最初に決められた薬価を維持する、という制度。特許の有効期間は二十五年だが、治験や承認などにかかる時間を除くと、販売出来る期間は長くて十五年、平均で十二・五年。この特許期間中は薬価を下げない。その代わり特許切れ後は特許期間中の累積薬価下落分を一挙に下げるという仕組みだ。ドラッグラグの解消も 日本製薬工業協会の仲谷博明常務理事が必要性を説明する。「今までは糖尿病薬や高脂血症薬のような化学合成でつくる低分子薬が中心でしたが、これからは細胞培養などでつくるバイオ医薬が主流になり膨大な開発資金がかかる。二年ごとに薬価が下がっていては新薬開発費を捻出できない。創薬のために薬価維持特例は是非必要です」。

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