民主党が担う「産業構造転換」の時代錯誤

執筆者:富山創一朗2010年3月号

経産省が策定を進める「産業構造ビジョン」。その裏にあるのは規制で業界を保護できた古き時代へのノスタルジーだ。 付け焼刃の「成長戦略」を示した民主党政権の尻馬に乗って、経済産業省が日本の産業構造の「大転換」を描こうとしている。もちろん「日本が何で食べていくか」を考えるのは重要だが、そんな大義名分の裏に、産業界に大号令を発したいという経産省のノスタルジーが潜む。何と、石油化学業界の生産調整で生き残りを図った一九八〇年代の産構法(特定産業構造改善臨時措置法)の復活を目論んでいるというのだから、時代錯誤も甚だしい。 年明けの閣議後に行なわれた記者会見。直嶋正行経済産業相は、年末の「成長戦略」の発表に合わせて、経産省の事務方に「産業構造ビジョン」を策定するよう指示したことを明らかにした。五月頃までにビジョンをまとめるとしている。 ビジョン策定の狙いについて直嶋氏は、「単品での欧米市場の獲得という従来のビジネスモデルが行き詰まってきている」としたうえで、「今後、日本は何で食べていくのか、新たな時代に対応した産業のあり方や雇用の創出を具体的に示していきたい」と語っている。「産業構造ビジョン」の策定は、大臣・副大臣・大臣政務官のいわゆる「政務三役」の会合で決まったという。鳩山由紀夫首相は、温暖化ガスの一九九〇年比二五%削減を掲げているが、経産省の事務方は「本当にそんな事を実行したら、日本の電力、石油化学産業はやっていけない」と猛烈に反発していた。それなら「産業構造を根本から見直せばいいじゃないか」という政務三役の発想でビジョンを策定することになったのだという。

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