米情報機関が狙うイランの“アキレス腱”

執筆者:春名幹男2010年4月号

 今年の国際舞台では、イランが主役になりそうだ。 首都テヘランでは、イラン改革派勢力の反政府デモが続き、国連安全保障理事会は、核開発を強行するイランに対して制裁決議案を審議する見通しだ。だが米情報機関は、イランの意外な「アキレス腱」を狙って、秘密工作を展開している。 イランの最高指導者ハメネイ師は、ムサビ元首相ら改革派に対して「彼らはイスラム体制の一部たる資格を失った」と、政治の表舞台から抹殺する可能性を示唆。改革派のリーダー、ムサビ元首相はウェブ上で、自分自身は「殉教することも恐れない」とする声明を出した。 一部の強硬派聖職者からはムサビ氏らを「神の敵」として処刑するよう求める声も上がっており、両者の対決はいよいよ最終的な段階を迎えたようだ。 加速度を増して核開発を拡大しようとするイランに対して、オバマ米政権の対応は厳しい。三月初め、スタインバーグ米国務副長官が急遽、中国と日本を歴訪した。その最重要議題は、国連安保理の対イラン制裁決議案への協力要請。特に制裁に反対する中国をどう説得するかがカギとなっている。 中国の制裁反対の理由は、イランからの石油輸入が滞る危険性。このためオバマ政権は、サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)に要請して、中国への石油供給量を増やす、と確約させたという。二月末には、サウジアラビアのサウド外相が訪中、対イラン制裁への協力を説いたと伝えられている。

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