プーチン政権によって投獄されたロシアの元石油王ホドルコフスキー元ユコス社長が、米ニューヨーク・タイムズ紙(一月二十八日付)に寄稿し、ロシアの「文明的危機」に警鐘を鳴らし、存在を誇示した。 獄中論文は、現在のロシアには「真の議会も独立した司法も自由な言論も礼節ある社会もなく、製品は国内競争力すら持たない」とし、ロシアが資源に依存する第三世界型三流経済に堕しつつあると述べ、エリートの責任を追及した。論旨は、「資源頼みの経済は原始的であり、民主主義は脆弱で、国民病としての腐敗が蔓延している。生産性は恥ずかしいほど低い」と現状を痛烈に批判したメドベージェフ大統領の昨年の論文「進め、ロシア!」とあまり変わらない。 メドベージェフは、二〇〇三年十月のホドルコフスキー逮捕に反対した数少ない政権内改革派。懲役八年の刑で服役中のホドルコフスキーは来年十月に出所するが、政権側は一二年の大統領選前の釈放を懸念し、横領などを問う新たな裁判を昨春に開始。有罪なら最高二十二年の懲役刑となる。元ユコス幹部らはロシアも加盟する「欧州会議」の人権裁判所に不当裁判として提訴しており、結果次第では西側との外交問題になりかねない。裁判の帰趨は、次の大統領選にプーチンとメドベージェフのどちらが出馬するかを占う試金石ともなろう。

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