「スラブ主義」は退潮 振子は「西欧主義」へ

執筆者:名越健郎 2010年4月号
エリア: ヨーロッパ

 プーチン政権によって投獄されたロシアの元石油王ホドルコフスキー元ユコス社長が、米ニューヨーク・タイムズ紙(一月二十八日付)に寄稿し、ロシアの「文明的危機」に警鐘を鳴らし、存在を誇示した。 獄中論文は、現在のロシアには「真の議会も独立した司法も自由な言論も礼節ある社会もなく、製品は国内競争力すら持たない」とし、ロシアが資源に依存する第三世界型三流経済に堕しつつあると述べ、エリートの責任を追及した。論旨は、「資源頼みの経済は原始的であり、民主主義は脆弱で、国民病としての腐敗が蔓延している。生産性は恥ずかしいほど低い」と現状を痛烈に批判したメドベージェフ大統領の昨年の論文「進め、ロシア!」とあまり変わらない。

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執筆者プロフィール
名越健郎(なごしけんろう) 1953年岡山県生まれ。東京外国語大学ロシア語科卒業。時事通信社に入社、外信部、バンコク支局、モスクワ支局、ワシントン支局、外信部長、編集局次長、仙台支社長を歴任。2011年、同社退社。拓殖大学海外事情研究所教授。国際教養大学特任教授を経て、2022年から拓殖大学特任教授。著書に、『秘密資金の戦後政党史』(新潮選書)、『ジョークで読む世界ウラ事情』(日経プレミアシリーズ)、『独裁者プーチン』(文春新書)など。
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