自民票を食う「日本人」強調スローガン
今月3日、第27回参議院選挙が公示された。石破政権にとっては逆風が予想される
参院選挙だが、開始早々からある種の“異変”を感じさせる選挙となった。
この週末、筆者は政界関係者の1人から電話を受けた。その人物はある地方自治体の首長なのだが、その人物がいささか興奮気味にこう語った。
「与党候補の応援に回っていたのだが、ウチの地域も参政党の候補者の勢いが凄い。自民は票をかなり食われるな」
参政党は去年10月の衆院選挙では、比例区で3議席を確保し、存在感を発揮していたが、今回はさらに勢いがあるようで、“台風の目”と目されている。
各報道機関が序盤の情勢調査を行っているが、どこの調査も傾向的には参政党に勢いがある。比例区だけでなく東京などの都市部の選挙区でも議席を窺う勢いだ。
「参政党は二ケタ(議席)行くのではないか」(政界関係者)
参政党の公約・政策を見ると「日本人を豊かにする」「日本人を守り抜く」など、「日本人」を強調するスローガンを多用し、「行き過ぎた外国人の受け入れに反対する」など、自民党をこれまで支持してきた「コアな保守層」が受け入れやすい内容となっている。
こうしたことから参政党が躍進すると割を食うのが自民党と見られており、与党内にも焦りの声が上がっている。
「参政党の勢いが(選挙の)終盤まで続けば確かに我々は苦しい状況になる。守勢に徹せざるを得ない」(与党関係者)
筆者は先月、本誌で、石破茂総理が「勝敗ライン」に掲げる自公の与党で50議席をなんとか獲得しても、その後、政局は参院を中心に不安定化し「石破降ろし」の可能性も出てくるという記事をまとめた。しかし、現時点の体感で言えば、果たして50議席も取れるだろうか、というのが率直な印象だ。
選挙後に向け動き出した旧安倍派
この参政党の躍進を自民党の所属議員たちはどう見ているのだろうか。
石破や森山裕自民党幹事長らと距離のある、旧安倍派の議員の一人は憤りを隠さない。
「参政党の支持層は明らかに自民党を支持してくれる層なのだが、石破さんや森山さんのもとでは真の保守政治は期待できないという失望感が、参政党に向かわせているのだろう」(旧安倍派議員)
またこの議員は、仮に石破が与党での50議席を死守して参院の過半数を守ったとしても、自民党内に石破を評価する声は全くないだろうと断言する。
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