影響力増す中国と目覚める「幻の大国」

執筆者:加瀬友一2010年4月号

 中国、インド、ブラジル、ロシアの新興経済大国「BRICs」に次ぐ世界経済の担い手として、東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国の存在感が高まるのは間違いない。だが政治的には、同地域の一体感は薄れていくだろう。 ASEANに遅れて加盟したカンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナムの四カ国を「後発国」と一括りにはできない。ベトナムが頭一つ抜け出し、タイ、インドネシア、マレーシアなどの「先発国」と存在感で肩を並べるのは確実だ。 この結果、域内の外交力学は劇的に変わる。ベトナム国内で民主化圧力が高まる気配はなく、同国共産党の統治力は衰えそうもない。同じ政治体制の中国の舞台裏での影響力は、必然的に高まる。 対抗軸として存在感が増すのが、インドネシアだ。同国は世界四位の人口を抱え、石油・天然ガス、銅などの資源国でもある。高度成長の条件である労働力人口比率は、二十年後まで上昇を続ける。一九九七年の通貨危機で脱落したが、経済協力開発機構は九五年の報告書で、BRICsに同国を加えた五カ国を「次の経済大国」と予測していた。 大陸部では、タイの政情が安定しない。その揺らぎに乗じて、中国はタイとの関係強化の動きを強めるだろう。その点、インドネシアは民主主義政権の安定が期待できる。G8に代わり国際秩序の中軸となったG20のメンバーでもあり、先進国は同国への信頼感を強めている。

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