改善の望みは薄い「体裁だけの民主主義」

執筆者:白戸圭一2010年4月号

 米国家情報会議が二〇〇八年十一月に作成した報告書「グローバル・トレンド二〇二五」は、二〇二五年のサハラ砂漠以南アフリカについて「世界的な原材料の需要増加にもかかわらず、人口の大部分は資源からの収入増、それによる大きな経済的利益の恩恵を受けることはないだろう」と悲観的な予測を示している。経済が急成長しているアフリカだが、所得格差は拡大の一途であり、二十年後も世界で最も脆弱かつ不安定な地域であることに変化はなさそうだ。 今日のアフリカの成長は、中国やインドなど新興国の資源需要増という外的要因に牽引されている。アフリカ側のガバナンスの改善によって内発的に始まった成長ではないことは、スーダン、アンゴラ、赤道ギニアなど政治腐敗が深刻な産油国ほど成長率が高いことを見れば分かる。 資源収益に財政を依存する国々の指導者層は、所得再分配にも民主主義にも概して無関心だ。中東の産油国で抑圧的君主制と彼らへの富の集中が続いていることは、その先例だろう。「グローバル・トレンド」が予測する二〇二五年のアフリカは「支配エリートが引き続きより多くの収入と財産を入手する半面、農村の貧困層は貧しいままか、一層困窮し、都市部にも広がっていく」という、何とも暗いものである。

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