第22回参院選が6月24日に公示された。選挙戦を前にして、各党は恒例のマニフェスト(政権公約)を発表したが、これをめぐって18日の岡田克也外相の記者会見で次のようなやりとりがあった。
 記者団「民主党のマニフェストには領土問題が記載されていない」
 岡田氏「マニフェストは限られたボリュームの中で、ある程度重点を置いて作成されている。領土問題がそこに書かれていなかったとしても、領土問題に後ろ向きであるということではもちろんない」
 記者団「限られたボリュームと言うが、マニフェストには菅首相の写真付きヒストリーが載っている。領土問題は、これより優先順位が低いのか」
 岡田氏「マニフェストは最終的には、党がレイアウトを含めて作ったもの。党としてはこれが適切だと判断したということだ」

マニフェストは票次第

 このやりとりは、記者団が重箱の隅をつついて岡田氏に言いがかりをつけているような側面もある。たしかにマニフェストの10ページ目から17ページ目にかけてページの下の隅には、記者団が問題視した「菅直人ヒストリー」と題するコーナーがある。菅首相の歩みを振り返るコーナーがそれほど必要だったのかどうかという価値判断は別として、紙幅にかぎりのあるマニフェストにすべての政策を書き込むわけにはいかないというのは、岡田氏の言う通りである。
 また、本来、マニフェストには、いつまでに何を達成するのかを国民に約束する意味合いがある。このため、北方領土返還のように、交渉相手のロシアの出方しだいで実現したりしなかったりする政策は、マニフェストにはなじまないという面もある。
 しかし、同じ外国相手の問題であっても、拉致被害者の救出は、きちんと盛り込まれている。とすると、領土問題が盛り込まれなかったのには、スペースに限りがあるとかマニフェストにはなじまないという問題とは別の理由があるのだ。
 この点について、民主党ベテラン議員は次のように指摘する。
 「票にならないからだ」
 領土問題は日本にとってきわめて重大な問題ではあるが、この問題をアピールしても選挙での得票をあまり期待できそうにない――。民主党はそう判断したのだろう。
 一方、拉致問題に消極的な姿勢を示せば、国民の強い反感を買う可能性がある。だからこそ、拉致問題は盛り込まれ、領土問題は盛り込まれなかった。言い方を変えれば、もし領土問題が民主党候補の選挙戦での当落を左右するものだったならば、民主党は迷わずマニフェストに書き込んだはずだ。

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