「失望」に転じたオバマの中南米外交

執筆者:遅野井茂雄2010年3月号

支持率低迷に悩む米オバマ政権。協調姿勢で臨んだ対中南米外交も、思うように進んでいない。「建設的な関与」は実現するのか。

 オバマ政権の中南米外交は当初、前政権の単独主義から多国間協調主義への鮮やかな政策転換を印象づけ、大きな期待をもって迎えられた。昨年四月の米州サミットでオバマ大統領は、「未来志向で対等なパートナーシップの構築」を謳い、上々の中南米外交デビューを果たした。続く六月の米州機構総会では、四十七年間続いた社会主義キューバの資格停止を解除する決議に米政府は同意する歴史的決断を下す。同月末に起きたホンジュラスでの軍事クーデターでは、米州機構から暫定政権を追放するなど、中南米と一体となって、米州の民主主義防衛体制に忠実にコミットする姿勢をみせた。だが発足一年が経過し、オバマ政権の「建設的な関与」政策は、中南米諸国の失望をかっている。
 最大の原因はホンジュラス問題への対応だ。当初、クーデターが「米州民主憲章違反」であるとして、正統なセラヤ大統領の政権復帰を即時無条件で他の諸国と一致して求めるまではよかったが、予想外の暫定政権の抵抗にあい腰砕けとなった。本来なら援助停止やビザ発給停止に止まらず、経済制裁の強化によってセラヤ復帰が求められたところだ。セラヤ派に対する人権侵害も発生しており、米政府が制裁に指導力を発揮すれば、その方向で問題が解決される可能性は高かった。それは、オバマ政権の多国間協調外交のコミットを確かめる上で、ベネズエラ・チャベス政権など反米左派政権が求めた踏み絵でもあった。

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